ククログ

株式会社クリアコード > ククログ > Test::Unit 2.0.1リリース

Test::Unit 2.0.1リリース

Test::Unit 2.0.1が RubyForge上でリリースされました。RubyGemsも提供されているの で以下のようにインストールできます。

% sudo gem install test-unit

経緯

Test::UnitはRuby 1.8.xに標準添付されている単体テストフレーム ワークです。しかし、Ruby 1.9.1からは miniunitが標準 添付され、Test::UnitはRubyForgeで開発が継続されることになりま した。これからもTest::Unitを使うときはRubyGemsでインストール することになるでしょう。

Ruby 1.8.xに標準添付されているTest::Unitは互換性のために、 Test::Unit 1.2.3としてリリースされています。Ruby 1.9.1でも Ruby 1.8.xに標準添付されているTest::Unitと同じTest::Unitを使 用したい場合は以下のようにします。

% sudo gem install test-unit --version '= 1.2.3'

テストファイル内(変更前):

require 'test/unit'
...

テストファイル内(変更後):

require 'rubygems'
gem 'test-unit', '= 1.2.3'
require 'test/unit'
...

余談ですが、Ruby 1.9.1でTest::Unitが標準添付から外れ、 miniunitが標準添付になったのはTest::Unitのソースがメンテナン スしづらくなっていたのが主な理由です。

Test::Unit 2.x

Ruby 1.8.xに標準添付されているTest::Unitは長い間メンテナンス はされていましたが、特に機能拡張などは行われていませんでした。 しかし、その間にもテスト環境を便利にするライブラリが公開され てきました。例えば、RSpecのような ビヘイビア駆動開発用のフレームワークや、 expectations のような軽量の単体テストフレームワーク、 Shoulda/ test/spec/ Mochaのように Test::Unitを拡張するライブラリなどです。Test::Unitは少し時代 遅れになってしまったのです。

最近のテスト用のフレームワークは ドメイン固有言語化の方向に向かっているようにも見えます。 これはRSpecの影響が大きいのでしょう。expectationsやShouldaもテスト用の DSLを提供します。

しかし、Test::UnitはDSLを提供しません。テストを「英語らしく」 ではなく「Rubyプログラムらしく」書きます。好みにもよりますが、 これはTest::Unitのメリットの1つと言えます。

Test::Unitに他のフレームワークやライブラリの機能を、 Test::Unitの「Rubyプログラムらしく」テストを書ける特性を活か したまま追加すれば、Test::Unitはもっと便利で使いやすいテスト フレームワークになるでしょう。Test::Unit 2.x系列はRuby 1.8.x に標準添付されていた頃とは違い、そのような方針の元で活発に開 発されていく系列になります。

例えば、以下のような機能が他のフレームワークやライブラリから 移植されています。

  • 差分表示
  • ネストしたテスト定義
  • 色付け
  • C-cでテスト中断時にもテスト結果を表示
  • 複数のsetup/teardown
  • ...

ここでは「差分表示」と「ネストしたテスト定義」だけ紹介します。 1

差分表示

RSpecでは比較結果が異なった場合に差分を表示して違いをわかり やすく表示してくれます。

diff_spec.rb:

require 'rubygems'
require 'spec'

describe String do
  it do
    ["I", "am", "a", "boy"].join("\n").should == ["I", "was", "a", "boy"].join("\n")
  end
end

実行結果(差分表示部分のみ):

% ruby diff_spec.rb -D
...
Diff:
@@ -1,5 +1,5 @@
 I
-was
+am
 a
 boy
...

同様の機能がTest::Unit 2.0.1にもあります。

test_diff.rb:

require 'rubygems'
gem 'test-unit'
require 'test/unit'

class TestDiff < Test::Unit::TestCase
  def test_diff
    assert_equal(["I", "am", "a", "boy"].join("\n"),
                 ["I", "was", "a", "boy"].join("\n"))
  end
end

実行結果(差分表示部分のみ):

% ruby test_diff.rb
...
diff:
  I
- am
+ was
  a
  boy
...

この例では、ほとんど同じ差分表示ですが、Test::Unit 2.0.1の 差分表示がRSpecの差分表示よりも便利なこともあります。

今度は"\n"ではなく" "でjoinして1行の文字列として比較します。

test_diff.rb:

require 'rubygems'
gem 'test-unit'
require 'test/unit'

class TestDiff < Test::Unit::TestCase
  def test_diff
    assert_equal(["I", "am", "a", "boy"].join(" "),
                 ["I", "was", "a", "boy"].join(" "))
  end
end

実行結果(差分表示部分のみ):

% ruby test_diff.rb
...
diff:
- I am a boy
?    ^
+ I was a boy
?   + ^
...

Test::Unit 2.0.1では必要なら同じ行のうち、どの列が異なってい るのかも表示します。RSpecでは行単位の差分までで列単位までの 差分は表示しません。

余談ですが、この差分表示形式はPythondifflib ライブラリで使われている形式です。

ネストしたテスト定義

Shouldaではcontextをネストさせることにより、便利にテストを書 くことができます。以下はShouldaのページからの引用です。 2

class UserTest < Test::Unit::TestCase
  context "A User instance" do
    setup do
      @user = User.find(:first)
    end

    should "return its full name" do
      assert_equal 'John Doe', @user.full_name
    end

    context "with a profile" do
      setup do
        @user.profile = Profile.find(:first)
      end

      should "return true when sent #has_profile?" do
        assert @user.has_profile?
      end
    end
  end
end

ネストされた"with a profile"のcontext内では上位の"A User instance"のcontext内のsetupが実行された後に実行されます。つ まり、以下のような実行順序になります。

  • setup: "A User instance" context
    • should: "return its full name"
  • setup: "A User instance" context
    • setup: "with a profile" context
      • should: "return true when sent #has_profile?"

実行されるフィクスチャ(setup)がネストで自然に表現されていま す。

Test::Unit 2.0.1では以下のように書きます。

class UserTest < Test::Unit::TestCase
  def setup
    @user = User.find(:first)
  end

  def test_full_name
    assert_equal('John Doe', @user.full_name)
  end

  class ProfileTest < UserTest
    def setup
      super
      @user.profile = Profile.find(:first)
    end

    def test_profile
      assert_true(@user.has_profile?)
    end
  end
end

これは以下のように実行されます。

  • UserTest#setup
    • UserTest#test_full_name
  • UserTest#setup
    • UserTest::ProfileTest#setup
      • UserTest::ProfileTest#test_profile

実行されるフィクスチャ(setup)がネストとクラス階層で自然に表現 されています。

まとめ

Test::UnitはRuby 1.9.1からは標準添付ではなくなりましたが、 Test::Unit 2.xとして活発に開発が続けられています。既存の他の フレームワークやライブラリのよいところは積極的に導入している ため、Ruby 1.8.xに標準添付されているTest::Unitよりもはるかに 使いやすくなっています。

今回は紹介しませんでしたが、他のフレームワークやライブラリに はないTest::Unit 2.x独自の便利な機能もあります。Test::Unitの 「Rubyプログラムらしい」テストの書き方が好きな場合はこれから もTest::Unitを使ってみてはいかがでしょうか。

  1. 「C-cでテスト中断時にもテスト結果を表示」は開発が進んでい き、たくさんのテストがある場合には地味ですがとても便利な機能 なのです。RSpecにも実装されています。

  2. ただし、Test::UnitはTest::Unit::TestCaseに修正してある。