退職金共済制度を活用した退職金制度 - 2012-11-14 - ククログ

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退職金共済制度を活用した退職金制度

はじめに

退職金共済とは、会社が社員のために毎月お金を積み立てて退職金を準備する制度で、単独で退職金制度をもつことが困難な企業が加入する共済です。

クリアコードでは、設立2年目にこの退職金共済制度を利用した退職金制度を設けました。当時はまだ会社が安定しているとはいえない状況で将来に対する不安もありました。もし会社に万が一のことがあっても社員が路頭に迷うことがないよう、多少なりとも退職金を用意することができればという思いから、退職金共済制度の活用を決めました。

クリアコードでは、国が運営する中小企業退職金共済制度(以下、「中退共」という)と東京商工会議所が運営する特定退職金共済(以下、「東商退職金共済」という)の2つに加入しています。退職金共済は社員にとっても会社にとってもメリットの多い制度です。

今回は、中退共を中心にその特徴をみていきながら、退職金共済制度活用のメリットとデメリットを紹介します。

中小企業退職金共済制度の概要

制度の目的と運営体制

中退共は昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。中小企業者の相互共済と国の援助で退職金制度を確立します。これによって中小企業の従業員の福祉の増進と、中小企業の振興に寄与することを目的としています。

中退共は独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部が運営しています。2012年9月末時点で、企業数で36万社以上、加入者は328万人にのぼります。

加入要件

中小企業であることが条件です。

ソフトウェア関連の業種の場合、常用の社員数100名以下もしくは資本金5000万円以下であることが条件となります。また、原則社員全員が加入しなければなりません。特定の部署のみ加入するといったことはできません。

掛金

掛金は月額5000円から3万円の範囲で16種類用意されており、加入する従業員毎に設定します。また、パートタイマーといった短時間労働者向けには2000円から4000円の掛金も用意されています。

掛金は会社が金融機関に納付します。

退職金の支払い

社員が退職したときや、役員に就任したときに、中退共から直接その者に退職金が支払われます。ただし、掛金の納付月数が11ヶ月以下の社員に対しては支払われません。

中退共利用のメリット

給与の一部を退職金の積立に充てた場合、社会保険料や所得税の負担額が減るので、退職金の受取まで考慮すると、手取り金額が増加します。また、社会保険料の一部は会社が負担しますので、会社にとっても法定福利費の削減につながります。

以下、具体的にどのぐらいの金銭的効果があるか検証します。

毎月の給与

ある社員(27歳、給与27万円)について、中退共に加入し毎月3万円を積み立てた場合と、中退共に加入せず毎月の給与に3万円を加算した場合の給与明細は次のとおりです。

中退共に加入した場合の給与明細・・・[1]

給与    270,000円
-健康保険   11,900円
-厚生年金    23,472円
-雇用保険     1,620円
-源泉所得税   5,870円
差引支給額 227,138円
  • 健康保険料および厚生年金保険料は報酬月額28万円とします。
  • 健康保険料率を42.5/1000、厚生年金保険料率を83.83/1000、雇用保険料率を6/1000とします。
  • 住民税は考慮していません。

中退共に加入しなかった場合の給与明細・・・[2]

給与    300,000円
-健康保険   12,750円
-厚生年金   25,149円
-雇用保険    1,800円
-源泉所得税   6,820円
差引支給額  253,481円

[1]と[2]を比較すると、[2]の方が26,343円手取り金額が多くなっています。また、社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)の合計額を比べると[2]の方が2,707円多くなっています。

会社が負担する社会保険料には労災保険料や児童手当拠出金も加わってくるため、[1]の方が、毎月2,707円以上低くなります。

退職金

勤続3年で退職した時の退職金支給額は次のとおりです。

[1]のときは、108万円(3万円 * 36ヶ月)が退職金支給額となります。

退職金に対する所得税を計算するにあたっては、次の計算式による所得控除を行います。

勤続年数20年以下の場合 = 40万円 * 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)

Aさんの場合は、40万円 * 3年 = 120万円が所得控除金額となり、退職金支給額よりも大きくなるため、所得税はO円です。

[2]のときは、もちろん退職金はありません。

合計金額の比較

3年間の給与の手取額と退職金の合計金額は次のとおりです。

[1] 227,138円 * 36 + 1,080,000円 = 9,256,968円
[2] 253,481円 * 36               = 9,125,316円

[1]の方が、131,652円多くなります。

また会社の社会保険料負担額は[1]の方が[2]よりも97,452円以上少なくなります。

このように中退共に加入した場合のほうが、社員は手取り金額が増え、会社は社会保険料負担額が減るという効果が得られます。

ただし、健康保険料は負担額が低くても受けられる効果は変わりませんが、厚生年金保険料は負担額が少なければ、将来受け取る年金の額も少なくなりますので、負担額の多少だけで効果を比較することはできません。労働保険も給与が少なければ、その分失業給付や傷病手当が少なくなります。

制度を活用した場合のその他のメリット

国の助成

中小企業退職金共済制度にかかる新規加入掛金助成及び掛金月額変更掛金助成という制度があり、新規加入した時や掛金を増額した時に掛金の一部について助成が受けられます。

掛金の前納

中退共では最大12ヶ月分の掛金を一括して納付することができます。納付した掛金は支払った期の損金に参入することができるため、利益圧縮の効果があります。

退職金共済加入のデメリット

退職金共済の掛金はふだん従業員には意識されません。また退職金が用意されていることが必ずしも、働くことのモチベーションアップにつながるとは限りません。1年未満で退職した場合は、退職金は出ません。掛金は掛け捨てになります。

まとめ

退職金共済を利用した退職金制度を利用した場合、月々の給与を退職金に回すことによって、社会保険料や所得税の負担を軽減することができ、可処分所得が増加します。会社も社会保険料負担が軽減されます。

近年、若い労働者が年金制度など将来への不安から貯蓄を増やす傾向にあることを考慮すると、退職金制度の活用は労働者のニーズに合致するのではないでしょうか。