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SEゼミ2015 - リーダブルコード勉強会を開催

2015-06-06にプログラミングが好きな学生のためのリーダブルコード勉強会を開催しました。この勉強会について、内容を作った立場からどうしてこのような内容にしたのかについて紹介します。また、今回の内容の課題と今後の解決案についてもまとめます。

基本的な流れは昨年開催したリーダブルコード勉強会と同じで次の通りです。

  1. 概要説明(「既存のコードからリーダブルなコードを発見する」を体験するよ!)

  2. 課題実装開始(各自リーダブルなコードで書く)

  3. コードチェンジ

  4. チェンジしたコードをベースに継続して課題を実装(リーダブルなコードを探しながらリーダブルなコードで書く)

コードをチェンジ(交換)して実装を継続することで「強制的に他の人の書いたコードを読む機会を作る」ことがポイントです。

詳細な流れに興味のある方はGitHubのclear-code/sezemi-2015の中に資料があるので、自由に活用してください。当日は6種類のスライドを使いましたが、それらへのリンクも含んでいます。資料もスライドもライセンスはCreative Commons BY-SA 4.0で、著作者は「株式会社クリアコード」です。

今年と昨年の違い

今年と昨年で基本的な部分は変わっていませんが、大きく変わったことがあります。それは次のことです。

  • メンターが増えた

  • テーマがOSSの開発になった

メンターが増えた

昨年はメンター5名で学生30名くらいでやっていましたが、今年はメンター20名超で学生50名くらいでやりました。メンターは単に数が増えただけではありません。優秀度合いは去年同様高いままです。メンターのリストを見れば「学生うらやましい!社会人だけど参加したかった!」と思うことでしょう。

メンターが増えたため、メンターそれぞれにどう振る舞って欲しいかを具体的に伝えることができなくなりました。そのため、今年は方針を共有して後はいい感じに振る舞ってもらうことにしました。共有した方針は「学生さんに新しい視点を与えること」です。答えを教えるのではなく、一緒に考えて、新しい視点を与えて欲しい、とお願いしました。

たとえば、ほとんどの学生さんは「他の人のコードからリーダブルなコードを探して自分のコードに取り入れる」ということを初めて経験します。新しいことに拒否反応を示したり、やることはわかってもうまくできないかもしれません。そんなときは、学生さんから今の気持ちを聞いて考えを整理することを手伝ったり、見方をこう変えてみるとなにか見えてこないか示唆を与えたりして欲しいということです。

難しいところもいろいろあったでしょうが、メンターのフォローにはとても助けられました。

たとえば、コードを読む習慣がない人の場合、プログラミングがうまければうまいほど、他の人のコードからうまくリーダブルなコードを見つけることができません。これは、「自分が書いている書き方がよい」という意識が強くなっているからです。こうなっていると、よほど自分よりうまく書かれていない限りリーダブルなコードを見つけられません。リーダブルなコードだと認識できない、と表現したほうが近いかもしれません。

このようなリーダブルなコードを見つけにくい状態になっている場合のフォローは難しいものです。「このコード、自分もやっているリーダブルな書き方じゃない?」とか、「違う見方で考えるとリーダブルだといえない?」というように、「すぐそばにある野生のリーダブルコード」に気づくきっかけを与えてくれたことでしょう。

リーダブルコードは読む人にとってわかりやすいコードなので、「キラキラしたリーダブルコード」を探そうと思うとかえって見つけられません。リーダブルコードはキラキラしていません。地味です。特別に意識せずともわかってしまうようなコードですから。そのようなコードを見つけて自分のプログラミングに取り入れるためには、「すぐそばにある野生のリーダブルコード」に気づける視点が必要なのです。

今回の勉強会では、学生さんには「すぐそばにある野生のリーダブルコード」に気づけるようになって欲しいと期待していました。そのため、メンターのみなさんにも「新しい視点を与える」という振る舞いをお願いしました。

テーマがOSSの開発になった

昨年のSEゼミのテーマは「インターンシップの準備」というテーマ(たぶん)で、リーダブルコード勉強会は「リーダブルコードを押さえておこう」ということで開催しました。

一方、今年のSEゼミのテーマは「OSSの開発に参加しよう!」で、リーダブルコード勉強会は「OSSの開発にリーダブルコードの知識があるとよい」ということで開催しました。

これを受けて、導入での説明も変えました。「他の人のコードを読んでよいところを取り込んで自分のコードに活かす」というのはOSSの開発では当たり前のこと。リーダブルコードを書けるようになるためにも同じやり方が使えるんだから、OSSの開発に参加するならこのやり方でいこう。という方向にしました。

これからOSSの開発に参加する中で、「他の人のコードから学ぶ」というやり方を当たり前の習慣として身につけてくれることを期待して説明を変えました。

今年から始めたこと

今年から「メビュー」を始めました。「レビュー」と似ていますが違います。

「メビュー」は「Mentor's View」の略で「メンターの視点」という気持ちです。

レビューは「問題がないか」という視点でコードを読みますが、メビューは「メンターの視点を共有する」という視点でコードを読みます。

自分だとよいと思っていなかったコードでも、メンターから見ればよいコードだと教えてもらえるかもしれません。リーダブルコードの解説にも次のように書いていますが、最初はヒントなしでよいコードを見つけることは難しいです。熟練したメンターの視点をもらって自分の「よいコードを見つける視点」を養います。それがメビューです。

実際にやるとぶつかること

まず、内容を活かす場所がぜんぜんないって思うだろう。でも、それはあなたの書いたコードがすでにリーダブルだからじゃない。単に「気づかない」からだ。本書を読んでいるときは次々と出てくる小さなコードを読みながら「たしかにここはそう変えた方がいいな。ふむふむ。」なんて読んでいただろう。読みながらあなたが「ふむふむ」言っていられたのは著者がわかりやすく書いてくれていたからだ。でも、実際のコードにはそういうヒントはない。著者のヒントがないんだから、実際のコードを読んでいるときは見逃してしまうだろう。それが自分が書いている真っ最中のコードならなおさらだ。読む側の視点じゃなくて書く側の視点でコードを見ているんだから。

課題と解決案

学生さんにはアンケートを書いてもらい、メンターの何人かには直接感想を聞きました。

アンケートを見る限り多くの学生さんにはよい機会となったようです。この勉強会をきっかけにOSSのコードを読んでいこうという気になった人もたくさんいました。

メンターの人の何人かには「楽しかった」と言ってもらえました。楽しくフォローしていたのなら、学生さんにもいろいろ伝わりやすかったことでしょう。

一方、次の点では課題がありました。

  • 最初の開発環境準備

  • プログラミング言語と課題のミスマッチ

  • 交換対象のプログラムの選び方

昨年もそうでしたが、何人かは開発を始める前のところでつまづきます。不安な人は30分くらい早めに会場に来てもらって、勉強会前に開発を始める準備のところを手伝ってあげるのがよいかもしれません。

この勉強会で実装する課題はファイルの読み込み処理があります。開いたファイルの管理方法、ファイルをどこに配置するか、などで工夫ポイントがでるかもしれないと考えて入れた処理です。しかし、SwiftやWebブラウザー上で動作するJavaScriptなどファイル操作をすることがまれなプログラミング言語では実装の難易度をあげてしまいます。これは意図したことではないのでファイルを使うこと自体やめた方がよさそうです。

途中でコードを交換することはこの勉強会での大事なところですが、交換する相手の実装がほとんど進んでいない場合は読む機会が少なくなってしまいます。その場合はあまり進んでいない人のコードは交換対象とせずに、ある程度進んでいる人のコードを2人以上で使うなどの交換の仕方の方がよさそうです。

他にも、課題から自由度を減らして実装に集中しやすくする、メモのまとめ場所をGitHubのIssueにしてメモをまとめるときの敷居をさげる、といったことも検討しています。

まとめ

昨年に引き続き開催したSEゼミのリーダブルコード勉強会の内容について、昨年の内容と比べながら紹介しました。また、実際に開催したわかった課題とその解決策もまとめました。

今年のSEゼミのイベントはまだ3つあります。引き続き優秀なメンターが多数参加するので、OSSの開発に参加したそうな学生さんに教えてあげてください。

今回の勉強会に参加した学生さん・メンターの感想に興味のある方は次のWebページを見てみてください。

今回の勉強会での成果に興味のある方は次のWebページを見てみてください。