はじめに
「オープンソース・ソフトウェア開発/公開のために様々な機能を提供する無料サービス」の1つに、OSDNがあります。 かつてSourceForge.JPとして運営されていたので、そちらのほうに馴染みがあるかたも多いことでしょう。
OSDNへとブランド名称が変更されたのが2015年5月のことですから、新ブランドへ移行して、まもなく1年ということになりますね。 今年に入ってからのOSDNのトピックとしては、ファイルリリースのミラーの増強が行われたようです。そして、2016年2月からはAPIの提供がはじまりました。
今回は提供されているAPIのうち、リリースに関連した部分を以下の流れで紹介します。
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OSDNのファイルリリース機能について
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APIとクライアントライブラリについて
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osdn-cliとは
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クライアントライブラリの使い方
OSDNのファイルリリース機能について
OSDNでのリリースは、ファイルリリースガイドにあるように基本的に3つの要素から構成されています。
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パッケージ(デフォルトではプロジェクト名と同じ)
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リリース(各パッケージにひもづけて作成する。複数リリース可能)
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ファイル(各リリースにひもづけて作成する。複数アップロード可能)
ただし、リリースの下に追加できるのは、ファイルのみという制約があります。ディレクトリを追加するようなことはできません。
類似のサービスであるSourceForge.netと大きく違うのがこの点です。SourceForge.netでは、ファイルリリースのために、frs.sourceforge.netというサイトが用意されています。 frs.sourceforge.netでは、所定のディレクトリへとアップロードしたディレクトリツリーはそのまま公開されるようになっています。 OSDNのような制約がないので、rsyncでアップロードできます。
上記制約で問題にならないケースがほとんどだと思われますが、例外もあります。 それはプロジェクトがパッケージのリポジトリを提供しようとしている場合です。 aptやyumを使って簡単にインストールできるようにdebパッケージやrpmパッケージのリポジトリを提供しようとすると、リポジトリのディレクトリツリーがOSDNのこの制約にひっかかります。
プロジェクトWeb1配下に置くという裏技がありますが、これはネットワークの帯域的な問題およびファイルシステムリソース的な問題を起こしかねないので、やってはいけないことになっています。 OSDN側で問題は認識しているものの、下記のチケットをみる限り残念ながらこの制約に関して進展はなさそうです。2
APIとクライアントライブラリについて
どんなAPIが提供されているかは、APIエクスプローラにて確認できます。
このAPIの提供に合わせて、それらを簡単に扱えるようなクライアントライブラリosdn-clientもリリースされています。
この記事を書いている4月時点で、Ruby/PHP/Pythonの3種類が提供されています。
OSDN Codeから各種言語向けのアーカイブをダウンロードできます。
クライアントライブラリの使い方については後述します。
osdn-cliとは
前述のクライアントライブラリosdn-clientを利用したコマンドラインツールです。
APIの使用例として参考になることでしょう。Rubyで実装されています。
以下のようにして、gemとしてインストールすることができます。
% gem install osdn-cli
インストールが完了すると、osdnコマンドが使えるようになります。
osdn loginを実行すると、ブラウザでアプリケーション連携確認画面が表示されます。

許可すると、認証コードが表示されるので、ターミナルにて、認証コードを入力します。
% osdn login
Access following URL to get auth code;
Type your auth code: (ここで認証コードを入力)
クレデンシャル情報については、~/.config/osdn/credential.ymlとして保存されるようになっています。
% cat ~/.config/osdn/credential.yml
---
access_token: (ここにアクセストークン)
expires_in: 86400
token_type: Bearer
scope:
- profile
- group
- group_write
refresh_token: (ここにリフレッシュトークン)
expires_at: 2016-04-02 15:56:29.336425089 +09:00
このあと説明するクライアントライブラリでは、上記のアクセストークンを使います。
クライアントライブラリの使い方
クライアントライブラリの使い方を次の3つの観点から紹介します。
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アクセストークンの設定(共通)
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参照系のAPIの使い方
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更新系のAPIの使い方
アクセストークンの設定
アクセストークンの設定は次のようにして行います。アクセストークンの値については、credential.ymlを参照してください。
OSDNClient.configure do |config|
config.access_token = "(ここにアクセストークン)"
end
参照系のAPIの使い方
次の4点について説明します。
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プロジェクト情報の取得
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パッケージ情報の取得
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リリース情報の取得
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ファイル情報の取得
プロジェクト情報の取得
プロジェクト情報の取得には、get_projectを使います。
api = OSDNClient::ProjectApi.new
proj_info = api.get_project("プロジェクト名")
p proj_info
パッケージ情報の取得
パッケージ情報の取得には、list_packagesを使います。
api = OSDNClient::ProjectApi.new
packages = api.list_packages("プロジェクト名")
packages.each do |package|
p package
end
後述するファイル情報取得では、パッケージ固有のIDをpackage.idとして引数に渡します。
リリース情報の取得
リリース情報の取得には、各パッケージのreleasesを参照します。
api = OSDNClient::ProjectApi.new
packages = api.list_packages("プロジェクト名")
packages.each do |package|
package.releases.each do |release|
p release
end
end
後述するファイル情報取得では、リリース固有のIDをrelease.idとして引数に渡します。
ファイル情報の取得
ファイル情報の取得には、get_releaseを使い、リリース情報のfilesを参照します。
api = OSDNClient::ProjectApi.new
packages = api.list_packages("プロジェクト名")
packages.each do |package|
package.releases.each do |release|
release_info = api.get_release("プロジェクト名", package.id, release.id)
p release_info.files
end
end
end
更新系のAPIの使い方
次の4点について説明します。
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パッケージの作成
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リリースの作成
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ファイルの作成
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ニュースの作成
パッケージの作成
パッケージの作成には、create_packageを使います。
package = api.create_package("プロジェクト名", "パッケージ名")
リリースの作成
リリースの作成には、create_releaseを使います。
package = api.create_package("プロジェクト名", "パッケージ名")
release = api.create_release("プロジェクト名", package.id, "リリース名")
リリースはパッケージにひもづいているので、パッケージ固有のIDをpackage.idとして引数に渡します。
ファイルの作成
ファイルの作成には、create_release_fileを使います。
package = api.create_package("プロジェクト名", "パッケージ名")
release = api.create_release("プロジェクト名", package.id, "リリース名")
open("ファイル") do |file|
file_info = api.create_release_file("プロジェクト名", package.id, release.id, file)
end
ファイルはパッケージとリリースにひもづいているので、パッケージ固有のIDをpackage.id、リリース固有の値をrelease.idとして引数に渡します。
ニュースの作成
ニュースの作成は、create_news_0を使います。create_newsではないことに注意してください。
api.create_news_0("プロジェクト名", title, body)
ニュースは、パッケージやリリースとは独立しているのでタイトルをtitle、本文をbodyとして引数に渡します。
まとめ
今回は、OSDNのファイルリリース機能をAPI経由で使う方法をパッケージ/リリース/ファイルの参照と作成に焦点をあてて紹介しました。 もし、リリース時のファイルのアップロードを自動化したいというときには、APIの利用を検討してみるといいかもしれません。