去る7月21日、Firefoxの法人向け長期サポート版であるFirefox ESR1の新しいメジャーバージョンである「Firefox ESR153(153.0)」がリリースされました。 1つ前のメジャーバージョンとなるFirefox ESR140のサポートは、10月13日に終了する予定となっています。
Firefox ESRは現在、ESR153とESR140の2つのバージョンが存在しており、8月18日には、それぞれのセキュリティアップデート版であるESR153.1とESR140.14がリリースされる見込みです。 ESR140のサポートは依然継続していますが、前述の通り10月13日にはサポートが終了するため、それまでの間にESR153へ更新することが強く推奨されます。
当社では、Firefox ESR140からESR153の間の変更点のレポートを公開しており、このレポート中では10のカテゴリーに分けて、法人利用に影響が及ぶと考えられる変更点を詳細に紹介しています。 この記事では、その中で特に影響度が大きいと考えられる項目を抜粋してご紹介します。
Firefox ESR140からESR153の間の変更点(抜粋)
全般
- Firefox Home(新しいタブを開いたときの空のタブ)の内容が一新され、壁紙のカスタマイズが可能になった(Firefox 145)ほか、天気予報などのウィジェットを表示可能になりました(Firefox 146)。
- 天気予報は
Preferencesポリシーでbrowser.newtabpage.activity-stream.widgets.system.weather.enabledをfalseにすることで無効化できます。 - 全般的なウィジェット機能自体は
Preferencesポリシーでbrowser.newtabpage.activity-stream.widgets.enabledをfalseにすることで無効化できます。
- 天気予報は
- 分割ビュー2機能により、1つのウィンドウ内に2つのページを並べて表示できるようになりました。分割ビューを作るには、タブの上で右クリックメニューを開いて「分割ビューを追加」を選ぶか、タブを2つ選択した状態で右クリックメニューを開いて「分割ビューで開く」を選択する(Firefox 149)か、任意のリンクを右クリックしてメニューから「リンクを分割ビューで開く」を選択します(Firefox 150)。
- この機能は
Preferencesポリシーでbrowser.tabs.splitView.enabledをfalseにすることで無効化できます。
- この機能は
- 複数のタブのURLを1ステップで共有できるようになりました。タブを選択した状態で右クリックメニューを開いて「共有」→「リンクをコピー」または「X 個のリンクをコピー」を選択すると、選択したタブのURLが一度にクリップボードにコピーされます。(Firefox 150、Firefox 152) また、タブを右クリック後に「共有」→「QRコードを生成」を選択することで、QRコードを生成することもできます。
- アドオンを導入せずにコンテナータブ機能(Firefoxコンテナー)を使用できるようになりました。(Firefox 153)
- この機能は
Preferencesポリシーでprivacy.userContext.enabledをfalseにすることで無効化できます。
- この機能は
- 生成AIチャットをインターフェースとしてのWebの利用に特化したスマートウィンドウ機能が実装されました。この機能は一部のユーザーから段階的に展開されます。(Firefox 153)
- この機能は、
AIControls.SmartWindowポリシーを{ "Value": "blocked", "Locked": true }に設定することで無効化できます。
- この機能は、
外観全般、メニュー構成の変更
- 設定画面3が刷新されました。より洗練された構成、明解なグループ分け、改良されたナビゲーションを備え、カスタマイズがより簡単になっています。(Firefox 152)
- この変更の一環として、Cookieの保存ポリシーの詳細設定はUI上から削除されました。ポリシー設定などによる制御は依然として可能です。
- 設定画面に、AI強化機能を管理するための「AI制御」セクションが追加されました4。(Firefox 148)
- AI関連機能は、
AIControls.Defaultポリシーを{ "Value": "blocked", "Locked": true }にすることで包括的に無効化できます。 - 各AI機能は、
AIControls.Translations(翻訳)、AIControls.PDFAltText(PDFプレビュー表示時の代替テキスト生成)、AIControls.SmartTabGroups(タブグループ名の自動生成)、AIControls.LinkPreviewKeyPoints(リンク先プレビューの要約)、AIControls.SidebarChatbot(サイドバーのチャットUI)、AIControls.SmartWindow(スマートウィンドウ機能)の各ポリシーでそれぞれ個別に有効・無効を制御できます。
- AI関連機能は、
- メニューの「その他のツール」→「プライベート翻訳」で、リアルタイムのプライベート翻訳を行えるようになりました。(Firefox 150、Firefox 151)
- この機能は、
AIControls.Translationsポリシーを{ "Value": "blocked", "Locked": true }にすることで無効化できます。
- この機能は、
アドレスバー
- Googleサジェストに依存せずに、アドレスバーで単位を変換できるようになりました5。長さ、温度、質量、力、角度およびタイムゾーンに対応しています。電卓機能と同様に、結果をクリックすることでクリップボードへのコピーも可能です。(Firefox 141)
- この機能は
Preferencesポリシーでbrowser.urlbar.unitConversion.enabledをfalseにすることで無効化できます。
- この機能は
- Windows版Firefoxで、Webページをタスクバーに直接ピン留めすることで、Webアプリとして実行できるようになりました。Webページの閲覧時にはアドレスバー上に「タブをタスクバーに追加します」アイコンが表示されます。詳細はWindows の Firefox でウェブアプリを使うを参照して下さい。(Firefox 143)
- この機能は
Preferencesポリシーでbrowser.taskbarTabs.enabledをfalseにすることで無効化できます。
- この機能は
- アドレスバーからカラーピッカー機能を利用できるようになりました。「pick color」「color picker」または「eyedropper」と入力し、「Pick a color」クイックアクションを選択することで、任意のページから素早く色情報を抽出・コピーできます。(Firefox 153)
セキュリティ・プライバシー保護
- 日本の住所自動入力6に対応しました。詳細は「フォーム上で住所を自動入力する」を参照して下さい。(Firefox 141)
- この機能は、
AutofillAddressEnabledポリシーをfalseにすることで無効化できます。
- この機能は、
- リンク先のプレビュー機能により、訪問前にリンク先の情報を参照できるようになりました。リンクの長押し、または右クリックメニューの「リンク先をプレビュー」によりプレビューが表示されます。利用可能なRAM容量が3GB以上のユーザーに対し適用されます。(Firefox 142より順次導入)
- この機能は、
AIControls.LinkPreviewKeyPointsポリシーを{ "Value": "blocked", "Locked": true }にすることで無効化できます。
- この機能は、
- ローカルネットワークへのアクセス制限が既定で有効となりました。外部のWebサイトがローカルネットワークリソースへアクセスする場合、Firefoxはユーザーに明示的な許可を求めます。(Firefox 147、Firefox 151より順次導入)
- 参考:Firefox での個人のデバイスとローカルネットワークの権限の制御
- 機能の有効・無効、明示的な許可を求めるか暗黙的に許可・拒否するか、常に暗黙的に許可する例外ドメインなど、この機能の動作は
LocalNetworkAccessポリシー7で制御できます。(Firefox 151)
- リモート改善設定(「更新間で Firefox の機能、パフォーマンス、安定性の向上を許可する」)をテレメトリー項目(「技術データと対話データをMozillaに送信する」)から分離した。テレメトリーデータの共有や実験的研究への参加をしていなくても、リモートブラウザの変更情報を受け取れるように設定できる。(Firefox 148)
- リモート改善設定は、
DisableRemoteImprovementsポリシーをtrueにすることで無効化できます。
- リモート改善設定は、
- 拡張機能について、ローカルファイルへのアクセスが既定で不可となりました。既存の「すべてのウェブサイトのデータへのアクセス」と分けて新設された「コンピュータ上のローカルファイルへのアクセス」権限によって、ユーザーはアクセスの許可または取り消しができます。(Firefox 153)
- 拡張機能やプラグインのブロックリストなど、セキュリティに関わるブロックリストの動的な更新を包括的に無効化する
DisableRemoteSettingsAndAcceptSecurityConsequencesポリシーが実装されました。(Firefox 153)
ネットワーク接続
- 無料で利用できる内蔵VPNの提供8が始まりました。旅行中に公共のWi-Fiを利用する、機密性の高い健康情報を検索する、個人的な買い物をする、といったケースで簡単に安全を確保できます。ログイン後に機能を有効にすることで、Firefoxでの閲覧時に安全なプロキシー経由で通信し、位置情報とIPアドレスを隠蔽できます。月間50GBまで利用でき、特定のWebサイトでの有効無効の切り替えも可能です。米国、英国、ドイツ、フランスにて順次展開中。(Firefox 149より順次導入)
- 法人向けの注記 本機能は法人環境は利用不可であり、ポリシー制御を利用するユーザーへは提供されない。手動での有効化は可能だが、4月7日より、管理者はポリシー設定により無効化できる。また
BlockAboutConfigポリシーにより、手動での有効化も禁止できる。 - カナダでも利用可能となった。(Firefox 150)
- この機能は
IPProtectionAvailableポリシーをfalseにすることで明示的に無効化できます。
- 法人向けの注記 本機能は法人環境は利用不可であり、ポリシー制御を利用するユーザーへは提供されない。手動での有効化は可能だが、4月7日より、管理者はポリシー設定により無効化できる。また
内蔵PDFビューワー(エディター)
- PDFファイル内に、ユーザーの注釈(要約・質問・タスクなど)としてコメントを作成・編集・削除できるようになりました9。コメントサイドバーにすべてのコメントが表示され目的のコメントにジャンプできるようになっており、長文のPDFや書き込みの多いPDFの場合に便利です。(Firefox 145)
また、PDF編集機能10にも対応し、ページ単位で並べ替え、コピー、ペースト、削除、エクスポートができます。(Firefox 150)- これらの編集機能は
Preferencesポリシーでpdfjs.annotationEditorModeを-1にすることで無効化できます。
- これらの編集機能は
- 複数のPDFファイルを内蔵ビューワーで直接1つのファイルに結合できるようになりました。(Firefox 151)
- PDFファイルをPDFサイドバーにドラッグ&ドロップすることで、複数のPDFファイルを結合できます。(Firefox 153)
- 画像ファイルをPDFサイドバーにドラッグ&ドロップすることで、新しいページとしてPDFファイル内に画像を追加できます。(Firefox 153)
- この機能は
Preferencesポリシーでpdfjs.enableMergeをfalseにすることで無効化できます。
FirefoxのAI関連機能の法人利用のリスクと安全性について
昨今の風潮に漏れず、FirefoxにおいてもAI関連機能の搭載が進み、今バージョンでは専用の設定画面が設けられるに至っています。 法人利用でこれらの機能をどう活用していくか、あるいは制限していくのかを考えるためには、AI関連機能の性質を正しく理解する必要があります。
FirefoxのAI関連機能には、クラウド型サービスを利用する物とモデルをローカル実行する物の両方があります。 「AI関連機能を利用する場合に新たに生じるリスク」という観点で整理すると、大まかには以下のように言えます。
- 情報流出のリスク
- ChatGPTやGemini、Copilotといった生成AIサービスは、基本的にサービス提供者の運営するクラウドサーバー上で動作しており、利用者はプロンプトという形で情報を送信して回答を得ることになります。そのため、社外秘の情報を外部事業者に渡すこと自体を禁じている場合には問題となります。
- チャットの回答を得るための送信自体は問題無い場合でも、サービスによってはプロンプトに含まれる情報がサーバー側に保存されたり、あるいはさらなる学習に利用される可能性はあり11、二次的な情報流出のリスクは否定できません。
- 固定のモデルをダウンロードしてローカル実行する形式のAI機能に関しては、クラウド型サービスとは異なり入力情報の処理は手元のPC上で完結するため、クラウド型のようなリスクはありません12。
- ChatGPTやGemini、Copilotといった生成AIサービスは、基本的にサービス提供者の運営するクラウドサーバー上で動作しており、利用者はプロンプトという形で情報を送信して回答を得ることになります。そのため、社外秘の情報を外部事業者に渡すこと自体を禁じている場合には問題となります。
- 回答の信頼性の問題
- 生成AIは「入力したプロンプトに対してもっともらしい回答を生成する」形で動作するため、まったくの創作エピソードをさも事実であるかのように説明したり、実在しない資料をさも存在するかのように紹介したりすることがあります(ハルシネーション)。それを鵜呑みにして意思決定を行うと、損害を被ったり法に触れたりする恐れがあります。
- モデルをローカル実行する機能の場合、Firefoxでは小型のモデルを使用することから、クラウド型の機能と比較すると結果の精度は劣る傾向にあります。
- 生成結果の利用時の権利侵害のリスク
- 生成AIは既存の作品と極めて類似性の高い出力を行うことがあり、それをそのまま使用した場合、著作権や商標権の侵害を問われるリスクがあります13。
- コンプライアンス上の懸念
- 生成AIは大量の文章や画像・映像などをソースとして学習させる形で作られます。学習ソースの出所や収集方法を明らかにしていないモデルについては、AIの学習ソースとして作品を使われる事を明確に拒否している作家の作品や、インターネット上に違法にアップロードされた作品をも学習ソースとして作られた可能性が残ることから、そのようなモデルの利用に倫理的観点での問題を指摘する声があります。
具体的な機能では、以下のように整理できます14。
| 機能 | モデルの実行場所 | 機能の使用自体のリスク | 結果を二次利用する場合のリスク |
|---|---|---|---|
| AIチャット、スマートウィンドウ | クラウド実行 | 情報流出、誤回答 | 著作権・商標権の侵害 |
| Webページの翻訳、翻訳パネルでのリアルタイム翻訳、PDFの画像挿入時の代替テキスト生成 | ローカル実行 | 誤訳・誤生成 | 著作権・商標権の侵害 |
| リンク先ページの要約、タブグループ作成時のグループ名提案 | ローカル実行 | 誤生成 | ほぼ無し(機能の性質上、結果を二次利用しない前提のため) |
法人においてまずリスクとして懸念されるのはクラウド型サービスでの情報流出ですが、FirefoxのAI関連機能は多くがローカル実行の形式のため、それらに関しては入力情報の流出のリスクを気にせず使用できます。
生成結果の信頼性や、既存の著作物や登録商標に類似した生成物を使用する事による問題のリスクは、Firefoxかどうか・法人利用かどうかにかかわらず一般的に注意が必要なので、ここでは詳しく説明しないことにします。
学習ソースの権利に由来するコンプライアンス上の懸念については、残念ながら厳密にクリーンとは断言できない状況です。 例えば翻訳機能のモデルについては主に公開研究用のデータセットを使用していることが公表されており、情報の由来をかなりの透明性で追跡できるようになっていますが、Webのクロール結果に由来するデータセットでは、権利者の許諾なく公開のWebページに掲載されていた文章が学習対象に含まれた可能性が全く無いとは言えません。 社会的にメッセージ性の強い事業を行っている組織など、クリーンなイメージが重要視される場合には、ローカル実行であってもAI機能の使用には慎重な判断が必要かもしれません。
FirefoxのAI関連機能は、ポリシー設定を用いて「今後追加される機能も含めて原則無効化し、機能ごとに個別に有効化する」カスタマイズが可能です。 組織の状況に合わせて、機能を適切に制御して運用するのがおすすめです。
まとめ
既に公開中のFirefox ESR140からESR153の間の変更点のレポートから、日本での法人利用に影響が大きいと思われる話題を抜粋してご紹介しました。
EdgeやChromeなど様々な選択肢のブラウザがある中で、集中管理やカスタマイズの利便性、企業向けの長期サポート版(ESR版)のあるFirefoxブラウザは、さまざまな業種の法人での使用実績および支持があります。 当社では、Firefox ESRの旧版から新版への移行(更新)をスムーズにするメタインストーラーのご提供や、リモート環境などで課題になりやすいメモリ使用量削減のカスタマイズなどにも対応可能な、法人向けサポートサービスをご提供しています。 Firefoxの法人利用に際して技術的な詳細の問い合わせ先をお探しのご担当者さまは、是非当社までお問い合わせ下さい。
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Extended Support Release。通例、1年間のセキュリティアップデートが提供され、その間は機能的な変更は行われない。 ↩
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https://support.mozilla.org/ja/kb/firefox-options-preferences-and-settings ↩
-
https://support.mozilla.org/ja/kb/solve-math-calculations-directly-your-firefox-addr ↩
-
https://support.mozilla.org/en-US/kb/automatically-fill-your-address-web-forms ↩
-
https://firefox-admin-docs.mozilla.org/reference/policies/localnetworkaccess/ ↩
-
https://support.mozilla.org/ja/kb/view-pdf-files-firefox-or-choose-another-viewer#w_pdf-huairunokomento ↩
-
https://support.mozilla.org/ja/kb/view-pdf-files-firefox-or-choose-another-viewer ↩
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2026年7月28日現在のプライバシーポリシーを参照する限りにおいては、Firefoxのサイドバーから選択可能なAIチャットのサービスであるAnthropic Claude、ChatGPT、Copilot、Google Gemini、Le Chat Mistralのいずれも、少なくともオプトアウト無しの初期設定で無料で使用する場合については、ユーザーが入力した内容を、他の利用者も共用するモデルの学習に利用する可能性があることを明記しています。ただし、各ユーザーの入力した情報が学習を通じて断片的にでも他のユーザーへの回答に混入するとなると様々な点で問題となるため、各事業者はそのようなことが起こりにくくなるよう対策を講じているとしています。 ↩
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アプリケーションの実装によってはモデルをローカル実行する場合でもテレメトリーを通じて入力データを送信する可能性がありますが、Firefoxの場合は入力データそのものは送信しないようになっています。 ↩
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著作権については、既存の著作物をあからさまに真似るよう指示した場合などでもない限りは、著作権の侵害を問われる可能性は低いです。他方、商標権については、既存商標のカバーする範囲に含まれる場合は偶然の一致であっても権利の侵害を問われる恐れがあります。 ↩
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翻訳機能、リンク先ページの要約、タブグループ名の提案、画像の代替テキスト生成の各機能については、モデルをダウンロードしてローカル実行する形式であること、入力を学習には利用しないことが明記されています。 ↩