結城です。
当社のメール誤送信対策製品「FlexConfirmMail」のThunderbirdアドオン版を従来から使用している方は、自動更新によって提供された最新バージョンとして4.2.5をお使いかと思います。 現在、このFlexConfirmMailの不具合を修正し新機能を追加した新バージョンとして4.2.8が公開されていますが、従来からFlexConfirmMailをお使いの方の環境では、このバージョンは自動更新では反映されません。 今後もFlexConfirmMailをThunderbirdでお使い頂く場合は、FlexConfirmMailの再インストールと設定の引き継ぎが必要となります。
本記事では、FlexConfirmMailの再インストールおよび設定の引き継ぎが必要となっている背景事情を説明し、実際の引き継ぎ手順を説明します。
背景
実は現在、Thunderbird Add-onsのWebサイト上にはFlexConfirmMailという名前のアドオンが以下の2つ登録されています。
- FlexConfirmMail バージョン4.2.8
- 識別子は
flex-confirm-mail-progressive@clear-code.com - 通称「通常版」
- 識別子は
- FlexConfirmMail Stable バージョン4.2.5
- 識別子は
flex-confirm-mail@clear-code.com - 通称「安定版」
- 識別子は
FlexConfirmMailは元々、識別子が flex-confirm-mail@clear-code.com である物のみが存在していました。
2025年5月1日以前からFlexConfirmMailを使われていた方の環境にはこちらがインストールされており、自動更新も行われていました。
ここで、ある時期に当社サポートサービスのお客様の環境で、FlexConfirmMailについて「不具合修正などは引き続き自動更新で適用したい」「新機能は自動更新で反映されて欲しくない」という、保守的な運用が必要な状況が発生しました。
このような場合、通常リリースとは更新チャンネルを分けた「安定版」を新たに設けて1、保守的な運用が必要な利用者のみにそちらへの切り替えを案内するのがセオリーです。 しかしながら、こちらのお客様の環境では端末数が非常に多く、集中管理も徹底されていない場合があるなどの事情から、FlexConfirmMailに新たに「安定版」を設けてそちらに切り替えて頂く、という対応は難しい状況でした。 そのため、新たに「安定版」を設けるのではなく、既存のものを「安定版」に位置付けて以後の更新を停止し、それとは別に新たな「通常版」を設けなおすという対応を取ることとなりました。
以下は、この対応を取った2025年5月1日の前後での状況の変化を表に整理したものです。
| 識別子 | 2025年5月1日まで | 2025年5月1日以後 | ||
|---|---|---|---|---|
| 名称 | 位置付け | 名称 | 位置付け | |
flex-confirm-mail@clear-code.com |
FlexConfirmMail | 通常版 | FlexConfirmMail Stable | 安定版(旧通常版) |
flex-confirm-mail-progressive@clear-code.com |
存在せず | FlexConfirmMail | 通常版(新通常版) | |
これは、「通常版」を使いたかった人にとっては、それ以前まで使っていたものがサイレントに「安定版」に切り替わったということを意味します。 そのため、今後も「通常版」を使いたい場合には、「旧通常版(=安定版)」から「新通常版」への移行作業が必要となっています。
旧通常版(安定版)から新通常版への移行手順
現在インストールされているFlexConfirmMailの識別
作業を行う前に、現在インストールされているFlexConfirmMailが旧通常版と新通常版のどちらであるかを調べます。 前述の名称変更はThunderbird Add-onsのWebサイト上のみに反映されているため、2025年5月1日以前からFlexConfirmMailを使用している場合、アドオン仮画面での表示名だけでは新旧どちらの通常版かは判別できません。
この判別には、「ヘルプ」メニューから開ける「トラブルシューティング情報」の「アドオン」の一覧を参照します。
ここで「アドオン名」が「FlexConfirmMail」である項目の「ID」が flex-confirm-mail-progressive@clear-code.com となっていれば、現在のバージョンはすでに新通常版となっていますので、移行作業は不要です。
「ID」が flex-confirm-mail@clear-code.com であれば、現在の版は旧通常版(安定版)ですので、以下の手順での移行が必要です。
設定のエクスポート
FlexConfirmMailの新通常版は、旧通常版(安定版)の設定状態を自動的には引き継げません。 これはThunderbirdの拡張機能の仕様上の制限によるものです。
Thunderbirdの現在の拡張機能はWebExtensions APIに基づいて作る必要があり、FlexConfirmMailもそのルールに従っています。
FlexConfirmMailはユーザーが変更した設定値などを storage.local というWebExtensions APIで保存していますが、このAPIで保存する情報は拡張機能ごとに隔離されており、識別子が異なる拡張機能が保存した値を読み取ることはできません。
そのため、設定状態を引き継ぐためには、旧通常版(安定版)の設定状態をエクスポートしてファイルに保存し、新通常版でインポートする、という操作を手動で行う必要があります。
設定情報のエクスポート手順は以下の通りです。
- Thunderbirdのアドオンマネージャーを開きます。
- インストール済み拡張機能の一覧からFlexConfirmMailを探します。
- FlexConfirmMailの項目に表示されているスパナアイコンのボタンをクリックし、FlexConfirmMailの設定画面を開きます。

- 設定画面が新規タブで開かれるので、内容を一番下までスクロールします。
- 「開発者向け」の見出し配下の「デバッグモード」にチェックを入れます。

- チェックボックスの下に「すべての設定」という見出しが出現し、その下に全設定項目の内部名の表が表示されるので、もう一度画面を一番下までスクロールします。
- 最下部の「Export」ボタンをクリックします。

- 全設定項目の情報がJSON形式のテキストとして新規タブで開かれるので、右クリックして「すべて選択」→もう1度右クリックして「コピー」とするか、キーボードショートカット Ctrl-A で全選択→ Ctrl-C でコピーして、設定の情報をクリップボードに格納します。

- 文字エンコーディングUTF-8に対応したテキストエディターにクリップボードの内容を貼り付けて、「flex-confirm-mail.json」などのファイル名で保存します。 保存の際は、文字エンコーディングをUTF-8(LE/リトルエンディアン)、改行コードをLFとし、BOMは付与しないようにします。
FlexConfirmMailの再インストール
続けて、旧通常版(安定版)から新通常版への入れ替えを行います。 アドオンをアンインストールするとアドオンの設定情報は完全に消去されてしまいますので、旧通常版のアンインストールは必ず、設定のエクスポート後に行って下さい。
- Thunderbirdのアドオンマネージャーを開きます。
- インストール済み拡張機能の一覧からFlexConfirmMailを探します。
- 「...」アイコンのボタンをクリックし、「削除」を選択します。

- 確認のダイアログが表示されるので、「削除」をクリックします。
- アドオンマネージャー上部の「アドオンを探す」欄(検索窓)に「FlexConfirmMail」と入力してEnterキーを押します。
- 表示された検索結果の中から「FlexConfirmMail」(名前の後に「Stable」が付かない方)を探し、「Thundebrirdへ追加」ボタンをクリックします。

- アドオンに与える権限の確認を求められるので、「追加」をクリックします。
- FlexConfirmMailのインストール完了通知が表示されるので、「OK」をクリックします。
- GitHubのThunderbird版FlexConfirmMailの最新のリリースページから、Native Messaging Hostのインストーラーをダウンロードし、インストールします2。
設定のインポート
続けて、新通常版への設定の取り込みを行います。
- Thunderbirdのアドオンマネージャーを開きます。
- インストール済み拡張機能の一覧からFlexConfirmMailを探します。
- FlexConfirmMailの項目に表示されているスパナアイコンのボタンをクリックし、FlexConfirmMailの設定画面を開きます。

- 設定画面が新規タブで開かれるので、内容を一番下までスクロールします。
- 「開発者向け」の見出し配下の「デバッグモード」にチェックを入れます。

- チェックボックスの下に「すべての設定」という見出しが出現し、その下に全設定項目の内部名の表が表示されるので、もう一度画面を一番下までスクロールします。
- 最下部の「Import」ボタンをクリックします。

- ファイル選択ダイアログが表示されるので、前々項で「flex-confirm-mail.json」などの名前で保存したエクスポート済み設定のファイルを選択して、「開く」をクリックします。
- 「開発者向け」の見出し配下の「デバッグモード」のチェックを外します。

これで、旧通常版(安定版)から新通常版への移行は完了です。
まとめ
以上、Thunderbird版FlexConfirmMailを長くお使い頂いている方向けに、既存バージョンが「安定版」扱いに変更された背景と、旧通常版(安定版)から新通常版へ以降するための手順をご紹介しました。
FlexConfirmMail(新通常版) バージョン4.2.8は、旧通常版(安定版)において発生していたDarkモードでの配色の問題や、空白文字を名前に含むメーリングリストへの正式対応、確認ダイアログのウィンドウの高さの正しい復元など、様々な改良を含んでいます。 長くFlexConfirmMailをお使いで、自動更新を通じて最新の改良を今後も反映し続けたい方は、本記事の手順に則っての新通常版への移行をお勧めいたします。
当社は、Thunderbird用アドオンの開発も含めて、Thunderbirdの法人運用における様々な課題の解決を行うサポートを、有償にてご提供しています。 Thunderbirdの運用でお困りのことがある企業のシステム管理・運用ご担当者さまは、是非ともお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
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Extended Support Release、法人向け長期サポート版。FirefoxやThunderbirdで通常リリース版とは別に設けられたバージョンで、新機能が追加されるメジャーアップデートは1年に1回程度に留められ、平時はセキュリティ脆弱性や安定性の問題の修正のみが提供されます。 ↩
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Thunderbird用拡張機能のNative Messaging Hostは、呼び出し可能なアドオンの識別子一覧を保持していますが、バージョン4.2.5およびそれ以前のNative Messaging Hostは旧通常版(安定版)の識別子しか含んでいないため、新通常版からは呼び出すことができません。新通常版を使用する際は、バージョン4.2.8よりも新しいバージョンのNative Messaging Hostが必須となります。 ↩