2025年8月29日に、Fluentdの安定版パッケージの新シリーズである、Fluent Package v6 LTSをリリースします。
現在の安定版パッケージであるFluent Package v5 LTSシリーズは、今年2025年末でサポート終了となります。 本リリースはその次期シリーズであり、2027年末までサポートされます。
また本リリースでは、ゼロダウンタイム・アップデート/リスタート機能、リカバリーの簡易化、パフォーマンス改善など、運用コストやランニングコストを削減する機能改善を多数実施しています。 v5 LTSシリーズは2025年末でサポート終了となりますので、それまでにぜひアップデートしてください!
本記事では、Fluentd開発者が最新のリリース内容を紹介します。
Fluent Package v6 LTSとは?
Fluent Package v6 LTSは、Fluentdの長期サポート・安定版パッケージです。
従来のFluentdプロジェクト公式パッケージであるtd-agentは、2023年末でサポート終了を迎えました。 Fluent Packageは、その後継パッケージとして、2023年8月末からFluentdプロジェクトが公式に開発・配布しているものになります。
現在のLTS版(長期サポート・安定版)であるFluent Package v5 LTSは、2025年末でサポート終了となります。 その次期LTS版として、Fluent Package v6 LTSは2025年8月29日にリリース予定で、少なくとも2027年末までサポートされます。
LTS版では、あらかじめアナウンスした長期の期間(最低2年間)にわたり、バグフィックスとセキュリティフィックスのみを行います。 そのため、長期の安定運用にとって、次の2点のメリットがあります。
- 継続的なアップデートがしやすい
- 最新のバグフィックスとセキュリティフィックスを継続して取り込める
- 次のメジャーアップデートに向けて計画的に準備ができる
- サポート期間をあらかじめアナウンスするため、次回のメジャーアップデートの時期が事前に分かる
詳しいサポート予定期間については公式サイトのアナウンスをご覧ください。
主な新機能と改善
本リリースでは長期的な安定運用にむけた多数の機能改善を実施しています。主な改善は次のとおりです。
- Fluentdをv1.19.0に更新
- バッファー退避機能など、障害耐性と運用性が大幅に向上しました。
- ゼロダウンタイム・アップデート / リスタート
- 設定ファイルの再読み込みやFluentdの再起動をゼロダウンタイムで実行可能になりました。
- サポートプラットフォーム刷新
- 最新OSに対応し、古いOSのサポートを終了しました。
- OpenTelemetryに対応
- OpenTelemetryデータのHTTP/HTTPSでの転送に対応しました。
- アップデートが容易
- 自動起動設定やサービス起動コマンドライン引数(Windows)を引き継げるようになり、再設定が不要になりました。
Fluentdの更新
Fluent Package v5 LTSではFluentd v1.16系を同梱していましたが、v6 LTSではFluentd v1.19系に移行します。 これにより、以下の最新機能が利用可能になります。
Fluentd v1.19.0の主な新機能と改善
- 対障害性の向上、およびリカバリーの簡易化
- リトライ超過時のバッファー退避に対応
- リトライ超過したデータを自動退避しておき、後からFluentdに簡単に再送させられるようになりました。
- バッファー破損検出の強化
- 強制システム停止によってバッファーファイルが破損しても、破損ファイルを自動退避して安全に起動しやすくなりました。
- メトリクスの充実
in_tailの追跡ファイル数など、Fluentdの正常稼働の監視に役立つメトリクスを複数追加しました。
- リトライ超過時のバッファー退避に対応
- パフォーマンス改善
- Zstandard (zstd)圧縮形式をサポート
- 従来のgzip圧縮と比べて、ディスク使用量の削減や転送速度の向上が期待できます。
- その他のパフォーマンス改善
- その他にも多くのパフォーマンス改善を実施し、処理速度やメモリー消費が改善しました。
- Zstandard (zstd)圧縮形式をサポート
v1.16系からの変更は多岐にわたるので、Fluentdの各バージョンでの改善内容の詳細については以下をご参照ください。
ゼロダウンタイムでのアップデート / リスタート
v6 LTS版から、ゼロダウンタイム・アップデートが利用できるようになります。 この機能により、設定ファイルの再読み込みやFluentdの再起動をゼロダウンタイムで安全に実行できます(Windowsは未対応)。
詳細について以下の記事をご覧いただき、ぜひご活用ください。
サポートプラットフォーム刷新
Fluent Package v6からは以下のプラットフォームをサポートします。
- Debian系
- Debian 12 (bookworm)
- Debian 13 (trixie)
- Ubuntu 22.04 (Jammy Jellyfish)
- Ubuntu 24.04 (Noble Numbat)
- RHEL系
- RHEL 8 互換
- RHEL 9 互換
- RHEL 10 互換
- AmazonLinux 2023
- Windows
本リリースによって、以下のプラットフォームのサポートを終了しました。
- Debian 11 (bullseye)
- Ubuntu 20.04 (Focal Fossa)
OpenTelemetryに対応
OpenTelemetryデータのHTTP/HTTPSでの転送に対応しました。 設定方法など詳細はプラグインのREADMEをご覧ください。
簡単に動作を確かめられるサンプルも用意していますので、お試しください。
アップデートが容易
アップデート時に、自動起動設定やWindowsサービス(fluentdwinsvc)のコマンドラインオプションを引き継ぐように改善しました。
これにより、従来必要だったアップデート時の再設定が不要になります。
また、手動でインストールしていたプラグインはLTS版のアップデート時に再インストールする必要があります。 本リリース以降からさらにアップデートする際に、ゼロダウンタイム・アップデートを使うことで、アップデート時に自動的に再インストールするようになりました(Windowsは未対応)。 これにより、今後のアップデートが容易になります。
その他の改善と修正
- Ruby 3.2からRuby 3.4へ更新
- 配布CDNをfluentd.cdn.cncf.ioへ移行
- Linux Capability機能で必要なgemを同梱
- RPMビルドで不要なリンカフラグ(package-note-file)を無効化
fluent-plugin-fluent-package-update-notifierプラグインを追加- Fluent Packageのバージョンアップ通知をログに出力します(Linux環境のみ)。
fluent-plugin-obsolete-pluginsプラグインを追加- Fluentd起動時にobsoleteなプラグインを検出しログに出力します(Linux環境のみ)。
fluent-plugin-systemdプラグインを更新SIGABORTエラーを修正しました。
まとめ
Fluent Package v6 LTSは、安定性・運用性を大きく改善した新シリーズのLTS版です。長期運用を見据えたアップデートをおすすめします。
クリアコードはFluentdのサポートサービスやプラグイン開発を行っています。 td-agentやFluent Packageのアップデートについてもサポートいたしますので、詳しくはFluentdのサポートサービスをご覧いただき、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
日本コミュニティ向けのXアカウントでは、日々、Fluentdに関する情報を発信しております。 ぜひ @fluentd_jp をフォローしてください!