2025年8月29日に、Fluentd の安定版パッケージ Fluent Package v6 LTS をリリースしました。
この v6 LTS ではいくつかのプラグインを新たに同梱しており、そのひとつが OpenTelemetry プラグイン です。
このプラグインを利用すると、Fluentd から直接 OpenTelemetry Collector や OTLP 対応サービス(Grafana Tempo、Datadog、New Relic など)へログを転送できます。
本記事では、この OpenTelemetry プラグインの概要と基本的な使い方を紹介します。
OpenTelemetry とは
OpenTelemetry は、アプリケーションやインフラの ログ・メトリクス・トレースを統一的に収集・転送するためのオープンソースプロジェクトです。 CNCF(Cloud Native Computing Foundation)が中心となり開発が進められており、主要なクラウドサービスや監視基盤が広く対応しています。
OpenTelemetry を利用すると、異なる言語やサービス間でも共通の OpenTelemetry Protocol (OTLP) でデータをやり取りできます。 たとえば、アプリケーションのトレース情報や Fluentd が収集したログを同じ Collector に送信し、一元的に可視化・分析することが可能になります。
Fluentd がこの仕組みに対応することで、既存のログ収集パイプラインを保ちながら OpenTelemetry ベースの観測基盤へスムーズに統合できるようになります。
OpenTelemetry プラグインの概要
fluent-plugin-opentelemetry は、現在、以下の 3 つのプラグインで構成されています。
| プラグイン名 | 役割 | 説明 |
|---|---|---|
| in_opentelemetry | 受信 | アプリケーションが OpenTelemetry SDK を使って送信したトレース・メトリクス・ログデータを受信します。Collector の代替入力として利用可能です。 |
| out_opentelemetry | 送信 | Fluentd 内で処理したイベントを OTLP 形式で Collector や対応サービスに転送します。 |
| in_opentelemetry_metrics | メトリクス | Fluentd 自身のメトリクス情報を OTLP 形式でイベント入力します。送信プラグインで対応サービスに転送できます。 |
これにより、Fluentd は OpenTelemetry 対応アプリケーションと Collector の間に立つ中継ノードとして機能します。
Fluent Package v6 LTS ではこのプラグインが標準で同梱されており、追加インストールなしで利用できます。
プラグインの簡単な利用例
アプリケーションが OpenTelemetry SDK を使用している場合、Fluentd を Collector 代わりに利用できます。 アプリケーションのデータを Fluentd で受信し OpenTelemetry Collector に転送する最小構成は次の通りです。
# アプリケーションから OTLP 形式のデータを受信
<source>
@type opentelemetry
tag opentelemetry
<http>
bind 0.0.0.0
port 4318
</http>
</source>
# データを collector へ送信
<match opentelemetry.**>
@type opentelemetry
<http>
endpoint "http://collector:4318"
</http>
</match>
アプリケーションのSDKの設定で、エンドポイントを Fluentd へ向けます。
Collector 側では、OTLP レシーバーを有効にして受信します。
receivers:
otlp:
protocols:
http:
endpoint: 0.0.0.0:4318
exporters:
debug:
verbosity: detailed
service:
pipelines:
metrics:
receivers: [otlp]
exporters: [debug]
traces:
receivers: [otlp]
exporters: [debug]
logs:
receivers: [otlp]
exporters: [debug]
exporters を変更することで、任意のサービスに中継できます。
2025年11月時点では、OpenTelemetry SDKで生成されたOTLP形式のデータが送受信でき、Fluentd が扱っている既存のテキストのログデータを OTLP 形式で送信できません。 既存のログを転送する場合には、Fluentd Forward Protocol を利用して Collector に送信する必要があります。 詳しくは サンプル の設定をご覧ください。
CloudNative Days Winter 2025
余談ですが、11月18日・19日に開催されるCloudNative Days Winter 2025の2日目に登壇し Fluentd の話をしてきます。
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まとめ
Fluent Package v6 LTS に同梱された fluent-plugin-opentelemetry により、 Fluentd は OpenTelemetry 環境とより密接に統合できるようになりました。 これにより、Fluentd は従来のログ集約だけでなく、OpenTelemetry ベースの観測基盤におけるエージェントやハブとしても活用できます。
クリアコードはTreasure Agent (td-agent)やFluent Packageのアップデートについてサポートしており、 Fluentdサービスをカスタマイズして運用している環境などのアップデート手順について 個別に対応できます。 詳しくはFluentdのサポートサービスをご覧いただき、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
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